清水 恒一のブログ
再生目的物の廃棄物該当性判断①(「おから事件」判決)
2025年04月28日

「おから事件」(最高裁平成11年3月10日)は、豆腐製製造業者より、豆腐を製造する際に排出される「おから」を肥料の原料とするために引き取っていた事案で、「おから」が廃棄物に当たるかが問題となりました。
地裁、高裁、最高裁ともに、本事案における「おから」は廃棄物に当たると判断しました。

1 廃棄物該当性の判断枠組み
本事案は、「おから」が「産業廃棄物」(廃掃法2条4号)に当たるかが問題となりました。廃掃法施行令2条4号は、食品製造業において原料として使用した植物に係る固形状の「不要物」が廃棄物に当たると定めています(いわゆる、動植物性残さです。)。
最高裁は、この「不要物」について、「自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物」をいうとしました。
そして、「不要物」に当たるかは、「その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である」としています。
そのため、不要物に当たるかの判断に当たっては、①物の客観的性状、②排出状況、③通常の取扱い形態、④取引価値の有無、⑤事業者の意思が考慮されます。
なお、本判決では、各要素の優劣については述べられていません。

2「おから」が廃棄物に当たるかの判断
①物の客観的性状について、「おから」は、非常に腐敗しやすく早急に処理する必要があると認定し、②排出状況については、豆腐製造業者が大量の「おから」を排出していると認定しました。
また、③通常の取扱い形態について、食用などとして有償で取引されて利用されるわずかな量を除き、大部分は無償で牧畜業者等に引き渡されるか、有料で廃棄物処理業者に処理が委託されていると認定しています。
そして、⑤事業者の意思については、本事案において、「おから」を引き取っていた業者が豆腐製造業者から処理料金を徴収していたことを考慮しました。
最高裁は、各要素について以上の検討をした上で、本事案における「おから」が廃棄物に当たると判断した高裁の判断を維持しました。

3 まとめ
本事案において、最高裁が用いた判断枠組みは、その後の裁判例において、廃棄物該当性の判断枠組みとして踏襲されています。
裁判所の判断はあくまで本事案の「おから」が廃棄物に当たると判断したものであり、別の事情の下において「おから」が廃棄物に当たらないと判断される余地はあります。
ただし、そのためには、「おから」を再生利用するための体制を整備した上で、その体制で再生利用可能な範囲での受け入れをするなど、不適正処理が行われるおそれがないといえる状態にする必要があります。