連帯貢献金は,プロ選手が所属クラブとの契約期間中に海外クラブに移籍し,移籍金が発生する場合に,移籍金の一部をその選手の育成に貢献したクラブに分配する制度です。
1 連帯貢献金制度の内容
連帯貢献金制度は,あるクラブとの契約期間中の選手が,別のサッカー協会に属するクラブに移籍する場合(=国際間移籍)に適用されます。
契約期間満了時などに別クラブと契約する場合には移籍金が発生しないため,連帯貢献金制度は適用されません。
移籍金が発生せず連帯貢献金制度が適用されない場合であっても,育成補償金制度(Training Compensation)が適用される可能性があります。
2 連帯貢献金の算定方法
選手が移籍する際に発生する移籍金の5%が,連帯貢献金として,選手が12〜23歳までの間の12年間に在籍したクラブに分配されます。
連帯貢献金を受け取る権利を有するクラブは,上記期間内に選手が在籍していたクラブになりますが,レンタル移籍で獲得し,選手登録をしていたクラブも連帯貢献金を受け取る権利を有します。
連帯貢献金の具体的な分配割合は下の表のとおりとなります。
育成クラブ |
当該クラブの受け取る割合 |
12歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の5% (移籍金の0.25%) |
13歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の5% (移籍金の0.25%) |
14歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の5% (移籍金の0.25%) |
15歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の5% (移籍金の0.25%) |
16歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
17歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
18歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
19歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
20歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
21歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
22歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
23歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ |
連帯貢献金の10% (移籍金の0.5%) |
3 具体例
イタリアセリエA所属クラブに在籍する26歳のプロ選手が,クラブとの契約期間中に移籍金30億円でイングランドプレミアリーグ所属のクラブに移籍するとします。
この場合,移籍金の5%である1億5000万円が連帯貢献金として,12歳の誕生日を含むシーズンから23歳の誕生日を含むシーズンまで在籍したクラブに分配されます。
この選手が,12歳のときに地元の少年サッカーチームに所属し,13歳から15歳までの間をJクラブのジュニアユースチーム,16歳から18歳までの間を私立高校のサッカー部,19歳から22歳までの間を私立大学のサッカー部にそれぞれ所属し,22歳でJクラブとプロ契約を締結し23歳まで同クラブに所属,24歳でイタリアセリエA所属クラブに移籍し,26歳まで同クラブに在籍した場合に,各クラブの受け取るこのできる連帯貢献金の分配額は以下のようになります。
少年サッカーチーム:(連帯貢献金の5%)×1年間=750万円
Jクラブのジュニアユースチーム:(連帯貢献金の5%)×3年間=2250万円
県立高校サッカー部:(連帯貢献金の10%)×3年間=4500万円
私立大学サッカー部:(連帯貢献金の10%)×4年間=6000万円
Jクラブのトップチーム:(連帯貢献金の10%)×1年間=1500万円
なお,選手が23歳の誕生日を迎えるシーズンより後のシーズンに在籍した期間については,連帯貢献金は発生しません。
4 まとめ
サッカー界では,年々移籍金が高騰しており,これに伴い育成クラブが手にする連帯貢献金の額も高額になることが増えています。
さらに,連帯貢献金は,選手が国外移籍をする度に発生するため,育成クラブは,連帯貢献金を複数回受け取ることができる可能性もあります。
そのため,育成クラブは,連帯貢献金として,多大な経済的利益を享受できる可能性があります。
また,連帯貢献金は,レンタル移籍により選手を獲得していたクラブも受け取る権利を有するため,経済面から有望な若手選手を獲得することが難しいクラブであっても,レンタル移籍により選手を獲得し,育成することで、若手選手の育成の和に入ることができる制度といえます。
これは,クラブにとってだけでなく,若手選手にとっても,育成の場が拡大されるという意味で大きなメリットがあります。
連帯貢献金制度によって,若手選手の育成市場はより活性化されているといえるでしょう。
(FIFA REGULATIONS on the Status and Transfer of Player(参照)