清水 恒一のブログ
再生目的物の廃棄物該当性③(「徳島木くずボイラー事件))
2025年05月01日

「徳島木くずボイラー事件」(徳島地裁平成19年12月21日)は、自社で排出した木くずをボイラーで燃焼し、熱源としていた事案で、熱源としていた木くずが廃棄物に当たるかが問題となりました。
裁判所は、本事案の木くずは廃棄物に該当しないと判断しています。

1 廃棄物該当性の判断枠組み
裁判所は、「おから事件(最高裁平成11年3月10日)」の判断枠組みを用いて、本事案における木くずの廃棄物該当性を判断しました。また、「おから事件」の判断枠組みで示されている各要素を検討する際の観点を詳しく述べています。
裁判所が言及した観点は以下のとおりです。
①物の客観的性状を検討する際の観点
「物が利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境保全上の支障が発生するおそれのないものであるか否か」
②排出状況を検討する際の観点
「物の排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前に適切な保管や品質管理がなされているものであるか否か」
③通常の取扱い形態及び、④取引価値の有無を検討する際の観点
「排出事業者が自ら利用する場合以外の場合には、製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないものであるか否か」
「物が占有者と相手方の間で有償譲渡がなされており、当該取引に客観的合理性があるものと認められるか否か」
⑤事業者の意思を検討する際の観点
「客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る事業者の意思として、適切に利用若しくは他社に有償譲渡する意思が認められる、又は放置・処分の意思が認められないものであるか否か」

2 木くずの廃棄物該当性
裁判所は、各要素について以下の事情を認定し、本事例における木くずは廃棄物に該当しないと判断しました。
①物の客観的性状について、実際に熱源として利用できていることから、本事案の木くずは燃料として利用されるべき品質を備えているとしました。
②排出状況については、木くずは、常に一定量発生するものではない(発生量を調整することはできない)が、事業において生じる副産物であるため当然であるとしています。また、常時発生することを前提に設備を整備していることから、需要に沿った計画的な排出といえるとしています。
③通常の取扱い形態及び、④取引価値については、自ら再生利用を行なう事案であり、有償譲渡の実績や市場形成は必要でないとしました。また、自社内で木くずを熱源とすることについて廃掃法の規制対象としていない実例があることも考慮しています。
⑤事業者の意思
処分費用の軽減する意図があったことは認定していますが、これによって木くずを処分する意思があったとはいえないとしており、木くずを適切に利用する意思を認めました。

3 まとめ
本事案の特徴は、自社内で木くずを再生利用したことにあります。
再生利用物を売却することを前提としている場合には、再生・売却までの一連の経済活動を考慮して、「④取引価値」の有無を判断します(参考「水戸木くず事件」)。
自社内での再生利用の場合は、再生品の売却という経済活動は予定されていませんが、適切に再生利用する意思があり、再生利用するため体制が整備されていること等を考慮し、廃棄物に該当しないと判断したものといえます。
再生目的物の場合、再生するための体制を整備することができているかは非常に重要な考慮要素です。再生目的で引受け、保管していたとしても、保管状況が杜撰であり、不適切処理が行われるおそれがあると判断される場合には、廃棄物であると判断される可能性は高くなります。