小沼 正毅のブログ
サッカー選手の移籍交渉におけるトラブルについて
2021年04月13日

 現在JFAでは仲介人制度を採用し、基本的に申請をした人は登録料と面接を受けて誰でも仲介人に登録できる制度になっています。その影響もあるのかもしれませんが、登録されている仲介人を介した移籍交渉におけるトラブルにあったという事例を多く見かけます。

(なお、「仲介人」と「代理人」は法的に明確な違いがありますが、今回はその点は割愛します)

 典型的な事例としては、ある移籍話を選手に持ちかけ(ほとんどが海外クラブへの移籍)、外国人の仲介人と一緒になって移籍の話を持ちかけ、日本人側の仲介人、外国人の仲介人に対してそれぞれ費用を支払い、移籍を約束されていると信じ込ませた後、現地の練習参加に行くと(酷い場合は練習参加すらできない)、移籍の話は全く具体化しておらず手数料だけ取られてしまうというものです。

 この種のトラブルは後を絶たず、私のところにも同様の相談が多く寄せられることがあります。

 海外移籍を考えている選手に対しては、仲介人に支払う費用が何の名目であるかを明確に確認してもらう必要があります。

 移籍交渉の仲介人は、契約が成立した際に、選手が受け取る年俸から報酬をもらうものであり、先に費用を払うものではありません。

 「先にお金を払えば移籍をさせてあげる」という勧誘があれば、まず怪しいと疑ってみて下さい。

 海外移籍の場合、海外移籍の前提となる練習参加などの調整をした報酬(仲介人報酬とは別のもの)としてお金を支払う場合がありますが、多くの場合、移籍させることがほぼ決まっているかのように勧誘して、お金を先払いさせる例が多いです。

 また、費用の大部分を外国人の仲介人に対して支払わせ、日本人側の仲介人の責任の所在を曖昧にさせる方法もよく見受けられます。

 仮に移籍先クラブが明確に選手の獲得の意向を示しているのであれば、クラブの責任ある立場の方から獲得の意思があるという旨の文書をもらうべきです。そのような文書をもらえないのであれば、その移籍話は嘘であるか、実現可能性の低いものであるといえるでしょう。

 外国に在住している仲介人との法的紛争になった場合、法的手続きを利用して金銭の返還を求めることは容易ではなく、ほとんどのケースで被害回復はされません。

 私のところに相談に来る事例はほとんどが被害にあった後の事例ばかりですが、移籍の仲介を依頼しようとする選手が事前に弁護士に相談をして、被害に遭わないようになって欲しいものです。

 今後、各国で女子サッカーについてもプロ化の動きが活発になっており、女子サッカー選手の海外移籍を巡る紛争も増えてくるのではないかと予想されます。

 競技に打ち込んできた選手達が競技以外の部分で躓くことがないよう、移籍を巡るトラブルについて、広く認知されて欲しいと思います。