遺言書を作成する目的のひとつとして、自身の死後に、相続人間で紛争が発生する防止することが考えられます。
遺言書において、全ての財産の分け方を定めておけば、遺産の分割の方法で紛争が生じるリスクは低くなります。
ただし、相続人には、相続における最低限の取得する持分(遺留分といいます)があります。
遺言書での定めた分割方法によって、相続人の一部が遺留分に満たない財産しか取得することができない場合には、遺留分を害された相続人は、法定相続分を超えて遺産を取得した相続人に対して、遺留分を侵害された分の金銭を請求することが可能です。
例えば、遺言書により、遺産の全てを相続人のひとりに取得させることとした場合には、他の相続人の遺留分を害することが考えられます。
そのため、遺産の分割方法で紛争が生じなかったとしても、遺留分侵害額の請求という形で相続人間の紛争が生じる可能性があります。
遺言書を作成するためには、遺言の内容を把握し、遺言によりどのような効果が発生するかを理解できる能力(遺言能力といいます)が必要です。
認知症に罹患していたとしても、遺言能力が認められる場合には、遺言を作成することはできます。
遺言能力の有無の判断は、遺言書作成者の精神上の障がいの有無・内容・程度だけでなく、遺言書の内容、遺言書作成の動機や遺言書作成に至る経緯等の事情も考慮してなされます。
そのため、遺言書の作成者が認知症であることや認知症の程度のみで遺言能力の有無が決するわけではありません。
例えば、遺言の内容が複雑な場合にはより高度な能力が要求されます。
遺言者の作成者が遺言当時に認知症であった場合、相続開始後に遺言能力の有無が問題とされることは少なくありません。
そこで、認知症に罹患された方が遺言書を作成する場合は、証人の立会いを要する公正証書遺言の方式を用いる必要性が高いといえます。
また、遺言の内容は簡単なものにした方が、遺言能力が無効とされるリスクを低減することができます。
そして、遺言を作成することとした経緯や動機を遺言書の付言事項として記載することで、遺言能力があったこと示す事情となることもあります。
遺言書の作成方式は複数ありますが、最も多く使われているのが、自筆証書遺言と公正証書遺言になります。
自筆証書遺言は、自分で作成することができ、費用もかからないため、最も手軽に遺言を作成することができます。
他方、自筆証書遺言は、要式を充たさないおそれがあるほか、作成後の偽造、変造の可能性もあるため、有効性が否定される可能性があります。
また、証人等の立会いを要しないため、作成時の状況が分からず、作成時の遺言能力の有無が問題とされることも少なくありません。
公正証書遺言は、公証役場において、所定の方式に則って作成するため、手続き的な負担があり、費用もかかります。
ただし、証人の立会があり、作成後の公正証書遺言は公証役場で保管されるため、自筆証書遺言と比べ、有効性が否定されるリスクは低いといえます。
遺言は、遺産の帰属など死後において自身の意思を反映させる重要なものであるため、手続き的な負担や費用がかかったとしても公正証書遺言の方式で作成することをお勧めします。
修理や買替えのために代車を利用した場合、代車使用料が損害として認められます。
事故車が高級外車である場合、事故車と同等グレードの高級外車を代車とする代車費用が認められるかという問題があります。
裁判例では、代車として、高級外車を使用する合理的理由が認められない限り、国産高級車を代車とする代車費用の限度で損害として認められるとするものがあります。
実際に、保険会社より、事故車より低いグレードの車両を代車とする代車費用の限度でしか損害を認めないと主張されることもあります。
ただし、事故がなければ事故車両を使用することできたことを考慮し、事故車両と同等グレードの代車の代車費用が損害として主張することができるケースもあります。
物理的全損(修理不可能)、経済的全損の場合には、被害車両の時価額等が損害額になります。
そして、車両時価額は、原則として、被害車両と「同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場で取得し得る価格」とされています(最判昭49年4月15日)。
実務では、オートガイド社の発行するレッドブックを用いることが一般的です。
ただし、レッドブックには、特殊な車両や登録10年を超過する車両は掲載されていません。そのため、中古車販売サイトの販売価格等を参考にすることで、適切な車両時価額を出すことができることもあります。
また、車両購入後に設置した付属品により車両価値が増加する場合には、付属品を考慮して時価額を算出し直すことも考えられます。
修理費用が車両時価額等を超過する場合、原則として、車両時価額等を超える修理費用を損害として請求することはできません(経済的全損)。
しかし、例外的に車両時価額等を超過する修理費用が損害として認められたケースもあります。
裁判例(大阪高判平成9年6月6日)は、①事故車両と同種同等の自動車を中古車市場において取得することが至難である場合、②車両所有者が、中古車市場で代物を取得する費用を超過する修理費用をかけて修理を行ない、引き続き使用することを希望することが社会観念上是認するに足る相当の事由がある場合には、車両時価額等を超える修理費用が損害として認められるとしています。
ただし、この裁判例は、自動車の愛着という個人的・主観的事情は②の事情に当たらないと判断しています。
被害車両の修理が可能な場合、原則として、修理費用が損害として認められます。
しかし、「修理費用」と「被害車両の時価額及び車両購入諸費用」を比較し、「修理費用」より「車両時価額及び車両購入諸費用」が高額である場合には、「車両時価額及び車両購入諸費用」の限度でしか損害は認められません。(これを経済的全損といいます。)
そのため、修理費用が高額な場合や、被害車両の使用年数が長く車両時価額が低額な場合などには、修理費用全額が損害として認められないことがあります。
保険会社より経済的全損であり、車両時価額の限度でしか損害として認められないと主張された場合には、保険会社の算出した被害車両の時価額が適切であるかを検討する必要があります。
また、車両保険に加入されている場合には、車両時価額を超過する修理費用につき、車両保険を利用することも考えられます。
交通事故により負傷し、整形外科で治療を行なった場合、治療費を請求することが可能です。
また、整骨院で施術を受けた場合にも、施術が怪我の回復のために必要かつ相当であるときには、施術費を請求することができます。
怪我の回復のためにどのような治療、施術が必要であるかの判断は医師が行ないます。
医師の指示を受けずに、自己判断で整骨院の施術を受けても、必要かつ相当な施術と認められないおそれがあります。
そのため、整形外科に通院して医師の診察を受け、医師より整骨院での施術が必要である(もしくは効果的である)との意見をもらった上で、整骨院に通院するようにして下さい。
また、整骨院への通院を開始した後も、医師の指示に従い、定期的に医師の診察を受けるようにして下さい。
前述のとおり、怪我の回復のためにどのような治療、施術が必要であるかの判断は医師が行ないますので、整形外科への通院を辞めてしまい、医師の診察を受けていなければ、治療が終了したと判断されるリスクが高くなります。
整骨院での施術費を請求するためには、整形外科への通院を基本に、医師の指示の下で整骨院に通院することが必要になります。
保険会社は、一定の期間、治療費の立替え払いのサービスを行なうことがあります(このサービスを一括対応といいます。)
保険会社が一括対応を行なう期間は、保険会社が相当と考える期間であり、医師が治療すべきと判断する期間よりも短いことも少なくありません。
特に、物的損害の程度から衝撃が軽微であると推測される場合や、通院の頻度が少ない場合などでは、短期間で一括対応が打ち切られるリスクが高いです。
保険会社より一括対応の打ち切りを打診された場合には、医師の意見を確認し、医師が治療を継続すべきとの意見である場合には、一括対応の継続を求めることが考えられます。
しかし、それでも一括対応が打ち切られてしまうことはあります。
一括対応が打ち切られたとしても、医師が治療を継続する必要があるとの意見である場合には、安易に治療を終了すべきではなく、治療費を自己負担して治療を継続することを検討すべきです。
一括対応終了後に自己負担で治療を行なった場合には、治療終了後に、自己負担した治療費を請求することになります。
一括対応打ち切り後の治療については、その相当性を争われる可能性が高いです。
任意交渉での解決が困難である場合には、訴訟等の手続きにおいて、治療期間の相当性を争うことも考えられます。
誠に勝手ながら,足利事務所,高崎事務所は,以下の日を年末年始休業とさせていただきます。ご迷惑をおかけしますが,何卒よろしくお願い申し上げます。
令和6年12月28日(土曜日)から令和7年1月5日(日曜日)