誠に勝手ながら,足利事務所,高崎事務所は,それぞれ以下の日を休業とさせていただきます。ご迷惑をおかけしますが,何卒よろしくお願い申し上げます。

 足利事務所 令和5年5月3日水曜日から令和5年5月7日日曜日(カレンダーどおりとなります)
 高崎事務所 令和5年4月29日土曜日から令和5年5月7日日曜日(5月1日、5月2日は休業となります)

 2022年12月から受講をしておりましたMission Sports Business Schoolの第7期の講義が2月21日で終了しました。約3か月間、週2コマ各2時間の授業と、いくつかのグループワーク発表を行いました。また、アウティングでは、秋田ノーザンハピネッツの試合を視察に行き、普段あまり触れることのないサッカー以外の競技の試合運営などを勉強することもできました。

 講師の満田哲彦さんの授業内容は非常に充実していて、スポーツビジネスの全体像をわかりやすく教えていただけました。

 また、スポーツクラブの関係者、スポンサー企業、現役のスポーツ選手、広告代理店の方など、実際に現在進行形でスポーツビジネスに関わっている方々の参加も多く、参加している生徒の方からも学ぶ機会が大変多かったです。

 普段どうしても、サッカー中心で物事を考えてしまいがちでしたが、異なる競技、異なる立場の方達との交流ができたことで、以前より広い視野でスポーツビジネスを理解できるようになり、そのことから、自分の知識経験から、どのようにスポーツビジネスに関わっていったらよいかという点も再認識できました。

 やはり、自分は弁護士として活動してきた時間が長いので、その点を活かしつつ、サッカーの活動を通じて知り合った世界中の方との接点を活用し、人と人、クラブとクラブ、クラブと企業などをつなぎ合わせる活動をしていきたいと思うようになりました。

 MSBSの卒業生は現在進行形でスポーツビジネスの世界で多大な活躍をされている方ばかりなので、私も、MSBSで学んだことを活かしつつ、自分にできることを続けていこうと思います。

 背景として勉強すべきことの概略は理解できたので、これからは実践をして、結果を残していくことを意識して活動してまいります。

2023年の年始、Stadio Olimpicoで行われたAS ROMAとボローニャの試合を見に行きました。試合の前日は、AS ROMA女子チームで大活躍中の南萌華選手にもお会いできました。南選手の通訳をやっているエマヌエルは、ローマキャンプを開催した2019年から交流があり、昨年のAS ROMAのジャパンツアーでも通訳として活躍していました。

 この時、ローマ女子チームはチャンピオンズリーズベスト8の進出が決まっており、対戦相手は未定の状態でしたが、南選手はバルセロナと試合がしてみたいと話しておりましたが、その後の抽選の結果、ベスト8はバルセロナとの対戦となりました。

 南選手には、チャンピオンズリーグの制覇と、今年7月に開催される女子ワールドカップでの優勝を期待しています。

 

 1月4日のボローニャとの試合では、ホスピタリティエリアの見学をしたかったこともあり、ホスピタリティエリアに入れるチケットを購入しました。モウリーニョ監督が就任して以降、オリンピコでのホームゲームは毎試合ほぼ満席であり、この試合も一般席を購入することはできませんでした。ディバラ選手の加入もあり、ローマが以前よりも人気を取り戻してきていることを実感しました。

 オリンピコでの試合観戦は、2015年以来でしたが、スタジアムの運営、ホスピタリティの充実など、色々な面で改善がされていると感じました。

 入口のチケットチェックの際には身分証の確認も求められ、これまでヨーロッパでのサッカー観戦で身分証の提示を求められたことは一度もなかったので、ローマがこのような点も配慮して対応していることに驚きました。

 ホスピタリティエリアでは豊富なドリンクや、食事、デザートなどが用意されており、ホテルのビュッフェのような感じで試合前やハーフタイムの時間を楽しく過ごすことができました。

 スポンサー企業やスポーツを通して企業間の交流を考えている企業などに広く利用されているとのことでした。

 コロナの影響もあり、長い期間交流ができていなかったイタリアの弁護士の友人にも久々に会うこともでき、充実した滞在となりました。

 

 当事務所で弁護人を務めておりました入江利和氏の強制わいせつ被疑事件について、令和5年3月10日付で正式に不起訴処分になりました。既にメディアでの不起訴処分報道がありましたが、一部メディアから逮捕時に実名報道をされ、不起訴処分時の報道には実名での報道がなされなかったこともあり、本件の経緯について入江氏本人と協議の上、説明をすることに致しました。

 入江氏は令和5年1月23日に強制わいせつの容疑で逮捕されましたが、当初から入江氏は事件を否認しておりました。入江氏の身柄拘束は、処分保留で釈放された令和5年2月10日まで続きましたが、それまで一貫して容疑を否認しておりました。

 その後、令和5年3月10日付けで正式に本件は不起訴処分となりました。

 入江氏は、当初から事件を否認し続けており、当然不起訴の処分は示談などによるものではありません。

 報道によれば、検察は不起訴の理由を明らかにしていないとされておりますが、強制捜査を行う権限を有する捜査機関が捜査を尽くし、入江氏の長期間の身柄拘束を行い、十分な取り調べを行った結果、入江氏に対する被疑事実を立証するだけの十分な証拠がなく、不起訴に至ったものであり、入江氏の主張が認められたものと考えております。

 本件は警察からの任意の事情聴取に応じて出頭した際、そのまま逮捕された事案であり、そもそも入江氏に罪証隠滅や逃亡のおそれはなく、逮捕勾留の必要のない事案であったと考えております。入江氏が元プロサッカー選手であり、逮捕の際に一部実名報道をされていることを考慮し、本件について誤った認識を持たれないよう、経緯を簡略に説明させていただきました。

弁護士 小沼正毅

誠に勝手ながら,足利事務所,高崎事務所は,令和4年12月29日から令和5年1月3日まで休業とさせていただきます。ご迷惑をおかけしますが,何卒よろしくお願い申し上げます。

連帯貢献金は,プロ選手が所属クラブとの契約期間中に海外クラブに移籍し,移籍金が発生する場合に,移籍金の一部をその選手の育成に貢献したクラブに分配する制度です。

 

1 連帯貢献金制度の内容

連帯貢献金制度は,あるクラブとの契約期間中の選手が,別のサッカー協会に属するクラブに移籍する場合(=国際間移籍)に適用されます。

 

契約期間満了時などに別クラブと契約する場合には移籍金が発生しないため,連帯貢献金制度は適用されません。

移籍金が発生せず連帯貢献金制度が適用されない場合であっても,育成補償金制度(Training Compensation)が適用される可能性があります。

 

2 連帯貢献金の算定方法

選手が移籍する際に発生する移籍金の5%が,連帯貢献金として,選手が12〜23歳までの間の12年間に在籍したクラブに分配されます。

連帯貢献金を受け取る権利を有するクラブは,上記期間内に選手が在籍していたクラブになりますが,レンタル移籍で獲得し,選手登録をしていたクラブも連帯貢献金を受け取る権利を有します。

 

連帯貢献金の具体的な分配割合は下の表のとおりとなります。

育成クラブ

当該クラブの受け取る割合

12歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の5%

(移籍金の0.25%)

13歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の5%

(移籍金の0.25%)

14歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の5%

(移籍金の0.25%)

15歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の5%

(移籍金の0.25%)

16歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

17歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

18歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

19歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

20歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

21歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

22歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

23歳の誕生日を含むシーズンに所属したクラブ

連帯貢献金の10%

(移籍金の0.5%)

 

3 具体例

イタリアセリエA所属クラブに在籍する26歳のプロ選手が,クラブとの契約期間中に移籍金30億円でイングランドプレミアリーグ所属のクラブに移籍するとします。

この場合,移籍金の5%である1億5000万円が連帯貢献金として,12歳の誕生日を含むシーズンから23歳の誕生日を含むシーズンまで在籍したクラブに分配されます。

この選手が,12歳のときに地元の少年サッカーチームに所属し,13歳から15歳までの間をJクラブのジュニアユースチーム,16歳から18歳までの間を私立高校のサッカー部,19歳から22歳までの間を私立大学のサッカー部にそれぞれ所属し,22歳でJクラブとプロ契約を締結し23歳まで同クラブに所属,24歳でイタリアセリエA所属クラブに移籍し,26歳まで同クラブに在籍した場合に,各クラブの受け取るこのできる連帯貢献金の分配額は以下のようになります。

 

少年サッカーチーム:(連帯貢献金の5%)×1年間=750万円

Jクラブのジュニアユースチーム:(連帯貢献金の5%)×3年間=2250万円

県立高校サッカー部:(連帯貢献金の10%)×3年間=4500万円

私立大学サッカー部:(連帯貢献金の10%)×4年間=6000万円

Jクラブのトップチーム:(連帯貢献金の10%)×1年間=1500万円

 

なお,選手が23歳の誕生日を迎えるシーズンより後のシーズンに在籍した期間については,連帯貢献金は発生しません。

 

4 まとめ

サッカー界では,年々移籍金が高騰しており,これに伴い育成クラブが手にする連帯貢献金の額も高額になることが増えています。

さらに,連帯貢献金は,選手が国外移籍をする度に発生するため,育成クラブは,連帯貢献金を複数回受け取ることができる可能性もあります。

そのため,育成クラブは,連帯貢献金として,多大な経済的利益を享受できる可能性があります。

 

また,連帯貢献金は,レンタル移籍により選手を獲得していたクラブも受け取る権利を有するため,経済面から有望な若手選手を獲得することが難しいクラブであっても,レンタル移籍により選手を獲得し,育成することで、若手選手の育成の和に入ることができる制度といえます。

これは,クラブにとってだけでなく,若手選手にとっても,育成の場が拡大されるという意味で大きなメリットがあります。

 

連帯貢献金制度によって,若手選手の育成市場はより活性化されているといえるでしょう。

 

FIFA REGULATIONS on the Status and Transfer of Player(参照)

育成補償金は,選手が他クラブとプロ契約をしてクラブを離れる場合や,若手選手が契約期間満了時に移籍金なしで他クラブに移籍する場合に,選手を獲得するクラブが育成クラブや移籍元クラブに対して育成の対価を支払う制度です。

 

1 育成補償金制度の内容

育成補償金制度は,①選手が初めてプロ契約をした場合,②プロ選手が23歳の誕生日を迎えるシーズンまでの間に国際間移籍が行われた場合の2つのケースで適用されます。

 

選手が初めてプロ契約を締結する際,契約クラブが海外のクラブであった場合には,①のケースとして育成補償金制度の適用があります。

プロ契約をした選手が23歳までの間に国際間移籍をした場合には,②のケースとして育成補償金制度の適用があります。選手が23歳までの間に複数回の国際間移籍をした場合には,その都度育成補償金が発生します。

国内移籍の場合には,FIFAの規定する育成補償金制度は適用されませんが,JFAの規定するトレーニング補償金制度の適用があります。

 

女子サッカー選手についてはFIFAの規定する育成補償金制度の適用はなく,JFAの規定するトレーニング補償金制度が適用されます。

 

育成補償金を負担するクラブと,これを受け取る権利を有するクラブは,①のケースと②のケースで異なります。

①のケース(初めてのプロ契約時)では,選手とプロ契約を締結したクラブが育成補償金を負担し,育成期間(12歳の誕生日を含むシーズンから21歳の誕生日を含むシーズンの10年間)に選手の育成に携わったクラブが育成補償金を受け取る権利を有します。

②のケース(国際間移籍時)では,移籍したプロ選手の移籍先クラブが育成補償金を負担し,移籍元クラブが育成補償金を受け取る権利を有します。

 

以上の内容をまとめると下の表のとおりになります。

 

①のケース

②のケース

適用対象

選手が初めてプロ契約を締結した場合

プロ選手が23歳の誕生日を迎えるシーズンまでの間に国際間移籍が行われた場合

受取権利

育成期間(12歳の誕生日を含むシーズンから21歳の誕生日を含むシーズンの10年間)に選手の育成に携わったクラブ

(=育成クラブ)

直前に所属していたクラブ

(=移籍元クラブ)

支払負担

プロ契約を締結したクラブ

移籍先クラブ

 

2 育成補償金額の算定方法

FIFAは,大陸連盟,各国協会などにより,各クラブを4つの「カテゴリー」に分類し,カテゴリーごとに「育成費(Training cost)」を設定しています。

 

育成補償金の額は,選手とプロ契約を締結したクラブ(①のケース),又は移籍先クラブ(②のケース)の所属するカテゴリーの「育成費」に,育成クラブ(①のケース)又は移籍元クラブ(②のケース)での育成期間(12歳の誕生日を含むシーズンから21歳の誕生日を含むシーズンの10年間)における所属年数を掛けて算出されます。

なお,育成補償費が不当に高額になることを防止するため,12歳の誕生日を含むシーズンから15歳の誕生日を含むシーズンまでの4シーズンの「育成費」は,カテゴリーⅣのクラブの「育成費」で計算するものとされています。

 

育成補償金額 = 育成費 × 育成期間における所属年数

 

「育成費(Training cost)」は毎年末に更新されますが,2021年に公表されたカテゴリーごとの育成費は下の表のとおりとなっています。

FIFA Training cost and categorization of clubs for2021

大陸連盟 ・ カテゴリー

カテゴリーⅠ

カテゴリーⅡ

カテゴリーⅢ

カテゴリーⅣ

アジアサッカー連盟

(AFC)

520万円

130万円

26万円

アフリカサッカー連盟

(ACF)

390万円

130万円

26万円

北中米カリブ海サッカー連盟

(CONCACAF)

520万円

130万円

26万円

南米サッカー連盟

(CONMEBOL)

650万円

390万円

130万円

26万円

オセアニアサッカー連盟

(OFC)

390万円

130万円

26万円

欧州サッカー連盟

(UEFA)

1260万円

840万円

420万円

140万円

(1USD=130円,1EUR=140円で計算)

 

3 具体例

⑴ ①のケース

Jリーグ所属クラブのユースチーム在籍の18歳の選手が,イングランドプレミアリーグ(UEFA・カテゴリーⅠ)所属のクラブと初めてのプロ契約をしたとします。

この場合,選手が12歳の誕生日を含むシーズンから18歳の誕生日を含むシーズンまでの間に,この選手が在籍していたクラブが育成クラブとして育成補償金を受け取る権利を持ちます。

例えば,この選手が12歳のときに地元の少年サッカーチームに所属し,13歳~15歳までJリーグ所属クラブのジュニアユースチームに,16歳~18歳まで,同クラブのユースチームに所属していたとすると,少年サッカーチームは140万円(UEFA・カテゴリーⅣの育成費×1年間),ジュニアユースチームは420万円(140万×3年間),ユースチームは3780万円(UEFA・カテゴリーⅠの育成費×3年間)をそれぞれ受け取る権利を有します。

 

⑵ ②のケース

Jリーグ所属クラブに在籍する22歳のプロ選手が,イングランドプレミアリーグに移籍するとし,この選手が18歳の誕生日を含むシーズンから同Jクラブに所属していたとします。

この場合,この選手は育成期間(12歳~21歳)において,同Jクラブに3年間在籍していたことになるので,育成補償金の額は3780万円(1260万円×3年間)になります。

 

4 まとめ

近年,欧州トップリーグのクラブが自クラブの下部組織で育成した選手をトップチームで活躍させるケースが増えており,若手選手の発掘・育成がクラブ全体に及ぼす影響は大きくなっており,各クラブは世界中から有望な若手選手を青田買いし,育成に励んでいます。

そのため,日本国内の将来有望な若手選手が,海外クラブからプロ契約の打診を受けたり,移籍のオファーを受ける機会が更に増加していくことが予想されます。

 

育成補償金制度は,若手選手が移籍金なしでクラブを離れる場合にも,育成クラブが選手を育成した対価を享受することができる制度であり,育成に携わったクラブに育成の対価を分配する制度として有効です。

育成補償金制度により,育成クラブに適切な対価が分配され,次の選手の育成に活用されることで育成の循環が生まれることを期待します。

 

FIFA REGULATIONS on the Status and Transfer of Player(参照)

2022年11月20日からFIFAワールドカップ2022カタールが開幕しました。

 

今大会は若手選手の活躍が目立ち,今大会を機にビッグクラブへと移籍する選手も出てくることでしょう。

 

そこで,気になるのが選手の移籍金についてです。

 

プロサッカー選手の移籍金は高騰の一途をたどり,選手を売却するクラブは大きな利益を得ていますが,選手を育成したクラブに対して利益の分配はされているのでしょうか。

 

FIFAは,育成クラブに対して利益を配分する制度として,育成補償金(Training Compensation)と連帯貢献金(Solidarity Contribution)という2つの制度を設けています。

 

育成補償金は,選手が他クラブとプロ契約をしてクラブを離れる場合や,若手選手が契約期間満了時に移籍金なしで他クラブに移籍する場合に,選手を獲得するクラブが育成クラブや移籍元クラブに対して育成の対価を支払う制度です。

 

連帯貢献金は,プロ選手が所属クラブとの契約期間中に他クラブに移籍し,移籍金が発生する場合に,移籍金の一部をその選手の育成に貢献したクラブに分配する制度です。

 

FIFAが定める2つの制度は,選手が海外移籍をする場合に適用され,国内移籍の場合は,JFAが独自に設けているトレーニング補償制度の適用を受けることになります。

 

各制度の内容は,下記記事にて概略を説明しておりますのでご覧ください。

育成補償金(Training Compensation)について

連帯貢献金(Solidarity Contribution)について

 

ワールドカップでの選手たちの活躍を見ていると,本大会後の移籍市場における選手の動向も気になるところです。

1 弁護士費用特約とはどういう制度か?
 弁護士費用特約とは,交通事故の相手方に対する損害賠償請求についての示談交渉や訴訟対応などを弁護士に依頼する場合に,弁護士費用の全部または一部が保険会社から支払われる制度のことを言います。

 

2 弁護士費用特約を利用するメリット
 ・多くの場合,弁護士費用を自己負担せずにすむ。
  多くの場合,弁護士費用特約を利用することにより,保険会社が弁護士費用を全額負担して支払いますので,弁護士費用を自己負担することはありません。

 ・適正な損害賠償金額がわかる,受け取ることができる。
  実際には,弁護士費用特約に加入しているにもかかわらず,これを利用して弁護士に依頼しなかったために,本来もらえるべき損害賠償金を貰うことができていないケースがあります。弁護士に相談すれば,適正な金額の損害賠償金額を知ることができ,そして最終的に受け取ることができます。
  多くの場合,弁護士費用特約を利用することにより,保険会社が相談料を負担するため,自己負担なく弁護士に相談することができますので,ご自身がどれだけの賠償金額を受けることができる見込みなのかについてはなるべく早急に弁護士にご相談なされるのが望ましいです。
  また,事故により負った怪我を治療するために,事故後しばらく通院を続けた後になって,突然,相手方保険会社から治療費の支払いを打ち切られるケースがあります。このようなケースを未然に防ぎ,適切な期間,治療を継続するためには,事故直後から弁護士から適切なアドバイスを受けるのが望ましいです。そのため,事故に遭われた際は,問題がないとお考えであったとしても,まずは,一度弁護士に相談してみてください。

 ・面倒な手続きを弁護士に任すことができる。
  また,交通事故に遭うと,特に,被害者側で事故により怪我を負った場合は,治療のために病院に定期的に通院する必要があり,それだけで身体的,精神的に負担が大きいです。そのような状況で,ご自身又はご家族加入の保険会社や相手方保険会社と頻繁にやり取りをする必要に迫られます。
弁護士に依頼すれば,そうした面倒な手続から解放されます。

 

3 弁護士費用特約を利用するデメリット
 弁護士費用特約は,利用しても,保険等級には影響がないため,保険料が上がることはありません。そのため,弁護士費用特約を利用することによるデメリットはありません。

 

4 むすび
 上記1~3でお伝えしましたように,弁護士費用特約をご利用できる場合は,事故直後から利用していただくことを推奨します。
 当事務所は,栃木県足利市,群馬県高崎市に事務所がありますので,足利市,佐野市,太田市,桐生市,館林市その他周辺地域で交通事故に遭われた場合は足利事務所に,また高崎市,前橋市その他周辺地域で交通事故に遭われた場合は高崎事務所に,ご相談ください。

A 弁護士が依頼を受けて受任通知書を発送すると、多くの場合、債権者からの請求は止まります。

 

1 受任後から破産手続開始決定が出る前まで

 貸金業者、クレジットカード会社、及び債権回収会社については、弁護士より受任通知書を受け取ると、法令や通達により、債権を取り立てるため債務者本人と連絡を取ることについて厳格に規制されるので、債権者からの債務者本人に対する電話連絡が止まることがほとんどです。

 具体的に説明しますと、貸金業者については、貸金業法21条1項9号において、「債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること」をしてはならない、と定められています。

 仮に、貸金業者が同号に違反すると、刑事罰(2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科される)の対象となります(同法47条の3第1項3号)。また、同違反行為は、行政処分の対象にもなります(同法24条の6の3など)。

 また、クレジットカード会社については、通達により、債権の取立てに当たり、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨又は調停その他の裁判手続をとった旨の通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」を行ってはならないとされています(旧通産省通達)。

 さらに、債権回収会社についても、債権管理回収業に関する特別措置法18条8項において、「債権回収会社は、債務者等が特定金銭債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとった場合において、その旨の通知があったときは、正当な理由がないのに、債務者等に対し、訪問し又は電話をかけて、当該債務を弁済することを要求してはならない」と定められています。

 なお、債権者が個人の場合は、法令等による規制がありません。個別具体的な事情によって対応が変わってきます。

 

2 破産手続開始決定が出た後

 破産手続開始決定が出た後は、基本的には、債権者が、債務者(破産者)に対し、電話連絡をしてきたり面会を強要してきたりするようなことはありません。

 債権者がそのような行為に出ないよう、破産法275条において、当該行為が刑事罰(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する)の対象として定められ、厳格に規制されています。

 

3 むすび

 以上でお伝えしましたように様々な規定があることから、貸金業者等に対しては、弁護士に依頼すれば、多くの場合、電話連絡を止めることができ、そして、債務者の置かれた状況に応じて、債務整理、民事再生、破産申立て等の手続を取り、生活の再建を図ることができます。